子どもの矯正歯科治療

 子供の矯正の場合、大人と違って成長があることから、美しい歯並び、正しい噛み合わせになるように早い時期から成長発育を見守ることが重要だと考えられます。
 あごの成長をうまくコントロールすることが可能な場合は、治療後の結果がよりキレイに仕上がる、抜歯する可能性が低くなるなどのメリットがあります。一方で、あごが成長する子供の頃に、悪い歯ならびや口呼吸などの癖をほおっておくと、正常に発育が行われず、顔やあごの形態などに悪い影響が出ることがあります。特に上下のあごの位置が前後的にずれることによって起こる受け口などの症状は、乳歯のはえている早い時期からの治療が効果的であると考えております。早い時期に矯正を始めると、あごの成長を適切に誘導しながら治療を進めていくことができるので、より永久歯が生えるときに正しい噛み合わせにできる可能性が高くなります。

「必要なことを、必要なタイミングで」

矯正歯科治療を始めるタイミング

 矯正を始めるタイミングは、子どもが器具を使えるようになればいつでも可能ですが、あごの成長を治療に利用できる時期に行ったほうが、より良好な治療結果を期待できます。気になったときは一度矯正歯科医による相談を受けることをお勧めします。
 特にかみ合わせの異常があると、物をうまくかめないだけでなく、体や顔のゆがみが生じる、見た目のコンプレックスとなることで性格などの心理面への影響もあることがあります。一方であまりにも早期に介入しすぎることで、長期間治療が必要になったりご本人の協力が得られない場合に虫歯や歯肉炎が多発してしまうこともあります。
近年早期治療が比較的安易に行えるようになったことから患者さんにとって矯正歯科治療が一般的になりましたが、すぐに開始をせず様子を見て治療することが望ましいことがあるのも事実です。
 矯正歯科治療をお子様に考えてあげる際には、ぜひ色々な医院でご相談をされることをお勧めいたします。

早期治療

乳歯が生え揃ったころ(3歳頃〜)からの矯正歯科治療

乳幼児の矯正

乳幼児での受け口治療の重要性

* 乳歯反対咬合の自然治癒に関しては過去に様々な報告があります。そのうち、乳歯列期に反対咬合を呈していた127名のうち、『様子をみて』反対被蓋が永久歯で改善したのは20名(15.7%)のみであったとする文献※があります。つまり、『様子を見ましょう』で治る可能性は極めて低いことになります。
 このため、当医院では乳歯列期に受け口を呈している患者さんには、下顎の後退位を積極的に訓練付けすることが大切であると考えております。
Nahgahara,Iizuka et.al.,223〜229,30(1),March 1992, Aichi-Gakuin J.Dent.Sci.

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乳幼児期の場合、機能的な反対咬合が比較的多いため容易に改善することがあります。
また、固定式の装置ではなく簡易的な装置を用いることで楽しみながら
治療を行うことができるため、ご本人への負担が少なくなります。

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約半年で受け口は改善されましたが、成長により受け口が再発する恐れがあります。このため16歳まで継続して経過観察を行いました。
  • ■治療例
(主訴)前歯が逆に噛んでいる
(診断名)骨格性下顎前突傾向の前歯部反対咬合
(年齢・性別)4歳・女児
(治療に用いた主な装置)歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド)
(抜歯部位)非抜歯
(治療期間)6ヶ月(3回来院)その後の経過観察期間12年(年に2度のご来院)
(治療費)10万円(+税)
(保定装置)なし
(リスクと副作用)装置の適応の可否には十分な診査が必要、成長による下顎前突の再発、叢生の発現、装置装用不足による治療効果減衰、予測治療期間の延長、装置装着による虫歯、歯肉炎など
※その他、重度の骨格性下顎前突の場合は軽度の改善が認められても、根本的な解決にならないこともあります。よって全ての患者さんに適応されるものでないことをご了承ください。

詳しくはお気軽にお問い合わせください

第1期治療

学童期(6~12歳)の矯正治療

第1期治療とは、
永久歯への交換が始まる6歳前後から乳歯が全て抜け、
永久歯が生えそろう12歳前後までの学童期を
対象とした矯正歯科治療です。

学童期は、あごの骨の成長が盛んで、歯の生え変わりもあるため、歯ならび・咬み合わせが絶えず変化しています。この時期はお子様のお口の状態および成長発育段階を的確に診断して、適切なタイミングに短期間で効果的な治療を行うことが大変重要です。

第2期治療

中高生からの矯正治療

第2期治療とは、永久歯に生え変わり、
大人と同じ矯正装置(ブラケットやマウスピース)による
矯正歯科治療を行うことです。

第1期治療で適切な成長コントロールとスペースコントロールが行われたのちに、 仕上げの矯正歯科治療(第2期治療)が必要になるケースと、成人になってから矯正歯科を始めたケースとを比較した場合、 大人の矯正歯科治療の期間が短いことや、痛みが少なく効率的な治療を行うことができる可能性があります。

第1期治療のメリットとデメリット

第1期治療のメリット

誤った方向に生えてくる歯を改善できる可能性がある

乳歯の抜歯タイミングをコントロールしたり、あごの大きさコントロールしたりする事で、八重歯や悪い方向に生える原因を減少させることができる可能性があります。

あごの変形を防止できる可能性がある

あごの成長期において、かみ合わせが正しくない状態を放置する事により、さらにあごの形が変形してしまうことがあります。成長が残っている時期にかみ合わせを改善する事により 、バランスのとれたかたよりの無いかみ合わせに改善できる可能性もあります。

手術の可能性が減る

*歯の生え変わりの時期に、歯の傾きが原因で受け口になっていると悪い傾きの歯にそって顎が成長し、成長が止まる頃には顎のずれが大きくなり、改善するには顎の手術を併用した矯正治療が必要となる場合があります。しかし、あらかじめ噛み合わせを治す事により、噛み合わせのバランスのとれた顎の成長が起こり手術の必要性が減少する可能性があります。

抜歯の可能性が減る

狭いあごを広げたり、あごの成長を正しい形に促す事により、不必要な抜歯の可能性を減らす事ができます。例えば成長後矯正治療をした場合、2~4本の永久歯抜歯が必要な場合でも、小児期から矯正治療を行う事により、抜歯をしないでの治療が可能になる確率が高くなります。

装置をつける期間が短くて済む

あらかじめ学童期に歯ならびを改善する事により、第2期治療が必要となった時、第2期での治療期間を短くする可能性があります。

コンプレックスの解消

早めに目立つ部分の歯ならびを改善する事により、からかいやいじめを改善しコンプレックスを解消する事により、健やかな精神発達の環境をととのえる事ができる可能性があります。

第1期治療の デメリット

*しっかりやっておくと永久歯が生えそろった後にメリットがある矯正歯科治療ですが、やはりデメリットもあります。メリットと併せてよく理解し、お子さんと相談した上で治療にすすんでいただけるよう当医院では診断時にお話をしております。

治療期間が長くなる

ほとんどの場合、あごの骨の成長が終わるころまで経過を観察する必要があるため、矯正期間が長期間になります。

矯正期間中に一時的に歯並びが悪くなることがある

顎の成長に合わせて歯並びを治していくため、一時的に歯並びが悪い状態になることもあります。

大人になってから再度矯正が必要になることがある

骨格的な問題も大きいケースの場合は、大人になってから再度矯正歯科治療(外科矯正を含む)が必要となるケースがあります。

治療の結果に差が出る

小児矯正に使用する装置は、その多くが家庭で患者さん本人に装着してもらうタイプのものなので、患者さん本人が治療に協力的でない場合には、良い治療結果が出にくくなります。

虫歯になりやすい

矯正中は複雑なかたちをした装置により磨き残しがでることが多く、虫歯になりやすくなります。当院では裏側の矯正装置を積極的に使用しているため、従来の装置と比較して虫歯になりにくいのですが、治療中は注意深く歯のケア(ブラッシング)を行う必要があります。